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【必須】個人事業主が知っておくべき源泉徴収の話とは?計算方法も解説
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2021.04.07

【必須】個人事業主が知っておくべき源泉徴収の話とは?計算方法も解説

個人事業主になると、業務内容に応じて見積書や請求書などを作成し、毎年2〜3月には確定申告を行う必要があります。この請求書の作成や確定申告時に関わってくるのが「源泉徴収」や「源泉徴収税」です。源泉徴収とはどのような仕組みで、報酬からどれくらい引かれるのでしょうか?この源泉徴収やその計算方法について、分かりやすく解説します。

個人事業主なら要チェック!源泉徴収の基本

そもそも源泉徴収とは何でしょうか?その制度の目的や、どのような場合に引かれるのかなど、基本的な内容を解説しましょう。

源泉徴収制度とは

源泉徴収制度とは、収入を得た個人が支払うべき所得税額を、給与や報酬を支払う者が天引きし、代わりに納付する制度のことです。本来、仕事を通して給与や報酬を得ると、その所得に応じて所得税を支払います。

 

所得税は毎年確定申告により納める必要がありますが、もし、労働者全員が確定申告を行うと、税務署はパンクしてしまうでしょう。そこで、会社員は勤務先の企業が、個人事業主やフリーランスなら報酬を支払った者が源泉徴収税を差し引き、残った金額を給与や報酬として個人に支払っているのです。

源泉徴収税が引かれる報酬とは?

実は源泉徴収税が引かれる報酬は、国によって定められています。以下に当てはまる場合、源泉徴収税を差し引かれるので注意しましょう。

 

 

参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは(国税庁)

個人事業主は源泉徴収税をいつ引かれる?

では、個人事業主は源泉徴収税をいつ引かれるのでしょうか。それは報酬を受け取るタイミングです。例えば、2021年4月分の報酬を取引先の法人に請求する場合、一般的には4月末や5月頭に請求書を作成します。この際、源泉徴収税を差し引いた金額を請求します。

 

ただ、会社によっては「業務委託の方は源泉徴収の対象外とする」などの規定を設けている場合があります。新しい取引先と仕事する際には、源泉徴収税の扱いについて確認しておくといいでしょう。

個人事業主の源泉徴収の計算式は?実際の例を解説

では、実際に源泉徴収税はどれくらい引かれるのでしょうか?その具体的な割合や計算方法をお伝えします。

個人事業主の源泉徴収税は「10.21%」が基本

個人事業主の報酬から天引きされる源泉徴収税は、基本的に10.21%です。なお、この税率は次のような内訳になっています。

 

源泉徴収税率(10.21%)=基準所得税率(10%)+ 基準所得税率(10%)× 2.1%

 

上記の「2.1%」は、東日本大震災からの復興の財源として利用される「復興特別所得税」です。この復興特別所得税は、2013年1月1日〜2037年12月31日の間、所得税に上乗せされています。

 

参照:個人の方に係る復興特別所得税のあらまし(国税庁)

 

ただし、報酬額が100万円を超える部分については、20.42%の税率にアップします。高額な報酬を得ている方は、注意して税額を計算しましょう。

(例)個人事業主の源泉徴収税を計算

例えば、2021年4月分に税抜で30万円の仕事を行った個人事業主Aが、法人Bに請求書を発行する場合、源泉徴収税は次のように計算できます。

 

源泉徴収税=30万円 × 10.21%=30,630円

 

なお、消費税も含めて相手方へ請求する場合、最終的な請求額は次の通りです。

 

報酬の小計=30万円

源泉徴収税(10.21%)=30,630円

消費税(10%)=30,000円

請求金額=30万円 - 30,630円 + 30,000円=299,370円

 

このように請求すれば、取引先から源泉徴収税が天引きされた報酬が入金されるでしょう。

 

個人事業主は、確定申告が必要!そのポイントを解説

この天引きされた源泉徴収税は、その年度の税金を申告する「確定申告」の際に、再計算する必要があります。確定申告は、毎年1月1日〜12月31日に得たすべての所得金額を集計して、翌年2月16日〜3月15日の間に行うもの。個人事業主は、所得税が発生する場合には、もれなく確定申告の対象です。

 

この申告期間はその年によって変わることがあり、2021年はコロナ禍によって、2月16日〜4月15日までと、例年より1か月間延長されました。この確定申告について、個人事業主が知っておくべきポイントを3つ解説します。

確定申告は白色申告・青色申告の2種類

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。その違いは、主に次の通りです。

 

青色申告って何?白色申告とは何が違う?メリットやデメリットについても詳しく解説

白色申告・青色申告の違い

白色申告 青色申告
控除額 ゼロ 10万円〜最大65万円
帳簿の形式 単式簿記 複式簿記(単式簿記だと控除額は10万円になる)
作成する書類 収支内訳書 貸借対照表・損益計算書
赤字の繰り越し できない できる

 

白色申告と青色申告の大きな違いは、確定申告時に所得から控除できる金額です。白色申告では控除額が”ゼロ”であるため、節税効果はありません。しかし、青色申告なら最大で65万円が控除可能です。収入を多く得た方は、青色申告を選ぶといいでしょう。

 

ただし、初めて青色申告を選ぶ場合は、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。この書類を出していない場合は、青色申告ができないのでご注意ください。

 

一方で、簿記の知識がなく、所得金額が少ない場合には、白色申告を選んでおいた方が無難なケースもあります。白色申告は所得からの控除額がないものの、帳簿付けや書類作成のハードルが低く、比較的簡単に申告書類を作れるためです。自分の収入状況に応じて、適切な申告方法を選ぶといいでしょう。

確定申告によって源泉徴収税が返ってくる?

確定申告時には、その年に天引きされた源泉徴収税の金額をすべて記入し、年間の所得税額から差し引きます。その結果、すでに必要な所得税よりも多くの源泉徴収税を支払っていた場合、確定申告後に税金が返ってくることがあります。これを税金の「還付」といいます。

 

個人事業主は、事業に使った経費を収入から差し引くことができるため、所得税計算のベースとなる「所得金額」は、収入よりも少なくなります。その結果、所得税の税額が減少し、事前に納めていた源泉徴収税よりも必要納税額が下回ることがあり得るのです。

 

個人事業主なら知っておくべき確定申告とは?やり方をわかりやすくご紹介

 

この所得税の還付は、確定申告をした約2週間〜1か月後に行われます。早めに確定申告を済ませておくと、この還付される時期も早まります。早めに還付金がほしい場合、なるべく早期に確定申告を終わらせるといいでしょう。

まとめ

個人事業主のうち、源泉徴収税の対象となる報酬を得た方は、その報酬から10.21%や20.42%が差し引かれます。

この源泉徴収税は毎年の確定申告によって正確に計算され、場合によっては還付金を受けられる可能性があります。

 

毎月の請求書を作成して源泉徴収税を支払い、確定申告時には正確な申告を行い、正しい所得税を納められるようにしましょう。

 

監修者プロフィール

服部 大(はっとり だい)

税理士/中小企業診断士

2020年2月30歳のときに名古屋市内で税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界では数少ない若手税理士。

 

単発の税務相談や執筆活動なども行い「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々の良き相談相手となれるよう日々奮闘中。

 

服部大税理士事務所:https://zeirishihattori.com