"先生になりたい"を応援するメディア「おけいこ先生」

   

お金の教科書

個人事業主の売上を計上するルールで押さえるべきポイント4つ!
お金の教科書
2021.08.25

個人事業主の売上を計上するルールで押さえるべきポイント4つ!

先生にとって、生徒から受け取る月謝や授業料は大切な収入です。ただし、収入を売上として計上できるのは「お金を受け取ったとき」「銀行口座に入金があったとき」ではありません。また、入金があった理由によっては、売上ではなく他の勘定科目が適当な場合もあります。今回は、個人事業主として売上を計上するルールで押さえるべきポイントをご紹介します。

そもそも「売上」とは?売上高や雑収入との違いも知ろう

そもそも「売上」とはどのようなものでしょうか?個人事業主が押さえておきたいポイントの1つ目は「売上」の基礎知識です。

 

売上と売上高

売上とは、個人事業主が本業で得た収入のことです。先生の場合は「生徒に教える」ことが本業のため、授業料や月謝を受け取った場合、それが「売上」となります。

 

一方「売上高」とは、売上の総額のことです。個人事業主の場合、11日から1231日までの収入や支出について損益計算書や貸借対照表を作成して決算を行い、売上高を計算します。

 

売上高と利益

売上高の算出には、どのくらいの経費がかかったのかが考慮されません。

 

一方、利益は売上から経費を差し引いたものです。売上が同じ100万円であっても、経費が10万円なのか、または50万円なのかで利益は変わります。

 

売上と雑収入の違い

雑収入は、本業に付随する収入を指す言葉です。

例えば、教室を開いて生徒に授業をすることを本業としている人が、教室運営で使用した備品(固定資産を除く)を売却して収入を得た場合には、雑収入に計上します。

 

個人事業主の売上はどのタイミングで計上するの?

先生が生徒からお金を受け取るタイミングはさまざまです。例えば1か月分の月謝を前月に受け取る場合や、カルチャーセンターなどを経由して、1か月分の報酬を後日に受け取る場合があるでしょう。

 

売上はいつ計上すればいいのでしょうか?

原則として「先生に授業料を受け取る権利が生じたとき」が売上を計上するタイミングです。

 

役務完了基準

先生が授業を行うことは「役務を提供する」ことです。役務が完了した時点で、先生には授業料を受け取る権利が発生します。この時点で売上を計上することを「役務完了基準」と呼びます。

 

例えば、原稿を執筆したり、パソコンの修理をしたり、楽器を演奏したりすることも「役務を提供する」ことです。先生の中には、授業をすること以外に、上記のような仕事を引き受けている人もいるでしょう。

 

原稿の執筆や、パソコンの修理が完了した場合、依頼者は「依頼した内容がきちんと行われているか」を確認します。依頼者が納得できる状況になっていなければ、料金は払ってもらえないでしょう。

 

そのため、依頼者の検収が済んだ時点で売上を計上する「検収基準」による記帳も認められています。

 

なお、どの基準を採用するかは取引先ごとに決めても問題ありませんが、一度採用した基準は継続して適用しなければなりません。

 

他の基準

個人事業主が売上を計上する基準は、他にも下記のようなものがあります。先生の事業とはあまり関係がない基準もありますが、知識として身につけておくとよいでしょう。

【さまざまな売上計上の基準】

売上計上の基準

内容

出荷基準

商品や製品を発送したタイミングで売上を計上する

納品基準

商品や製品が納品されたときに売上を計上する

引渡基準

受注先から注文を受けて作ったものを、依頼者に納品した時点で売上を計上する

 

続いて、先生の事業で起こり得るお金の流れについてご紹介します。

 

月謝制など授業料を先に払ってもらう場合

例えば翌月の月謝を前月に支払ってもらう場合、お金を受け取った時点では授業を行っていないため、売上を計上することができません。月謝は「前受金」として、預かっているお金です。

 

翌月、授業を行った後に、「売上」を計上します。

 

授業後に授業料を受け取る場合

授業が終わってから授業料を受け取る場合、授業が完了した時点で「売上」を計上できます。生徒から入金されるまで時間がある場合は「売掛金」が生じることになります。

 

カルチャースクールなどを通して源泉徴収された報酬を受け取る場合

カルチャースクールで教える場合、先生は生徒と直接契約をするのではなく、カルチャースクールと契約をすることがあります。

 

1か月あたり〇〇回の授業を行うと報酬は〇〇円

・生徒を〇〇人受け持つと報酬は〇〇円

 

など、契約の方法はさまざまでしょう。

 

この場合も、授業が完了した時点で「売上」を計上し、その金額はカルチャースクールと契約した金額とします。

 

入金があった時点で、売上の他にカルチャースクールに支払った手数料は「支払手数料」など、源泉徴収された金額は「事業主貸」などの勘定科目を用いて記帳します。

 

なお、事業主貸とは、個人事業主が事業用の資産を、事業とは関係のないことに使った場合に使用する勘定科目です。事業用の銀行口座から生活費を引き出した場合や、所得税などの税金を支払った場合に使用します。

 

天災などで授業ができなかった場合

生徒が自己都合で欠席した場合、あるいは天災などやむを得ない事情で授業を行うことができなかった場合の対応も、事前に決めておきましょう。

 

・他の日に振替授業を行う

・授業ができなかった分の授業料は返金する

 

などが考えられます。

 

月謝制で前受金が発生している場合は、授業の不成立により、前受金を返金することになります。

 

授業料を払ってもらえない場合

生徒の所在が分からなくなったり、カルチャースクールが倒産したりした場合に、授業を行ったのに報酬を払ってもらえないケースでは、貸倒損失として処理する方法があります。ただし、貸倒損失に計上してもよい場合は、次の表の3つの要件のうち、いずれかに該当する場合に限られているため、注意しましょう。

【貸倒損失として計上できる3つの要件】

要件

内容

法律上の貸倒

債務者に

・法的整理手続による債権の切捨て

・法的整理手続によらない関係者の協議決定による債権の切捨て

・債務者の債務超過状態が相当期間継続し、弁済不能のため、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除

などがあった場合

事実上の貸倒

債務者の支払い能力(資産状況)から見て、回収不能であることが明らかになった場合

形式上の貸倒

売掛債権について取引停止後一定期間弁済がない場合、または回収費用が債権の額を超える場合

 

売上を帳簿に記入するにはどんな仕訳をするの?

先生が売上を計上するとき、帳簿にはどのように記入するべきでしょうか?

 

単発のセミナーなど、その都度料金を払ってもらう場合

授業の当日に、現金で授業料を支払ってもらう場合は、次のように仕訳をします。 

借方

金額

貸方

金額

摘要

現金

5,000

売上

5,000

セミナー実施

 

月謝制などで前受金を受け取る場合

事前に月謝を受け取った時点では、次のように仕訳をします。

借方

金額

貸方

金額

摘要

現金

10,000

前受金

10,000

〇〇さん、8月分月謝

 

その月の授業が完了した時点では、次のように仕訳をします。

借方

金額

貸方

金額

摘要

前受金

10,000

売上

10,000

〇〇さん、8月分

 

授業後に授業料を受け取る場合

授業が完了した時点では、次のように仕訳をします。

借方

金額

貸方

金額

摘要

売掛金

10,000

売上

10,000

〇〇セミナー実施

 

入金があった時点で、次のように仕訳をします。

借方

金額

貸方

金額

摘要

預金

10,000

売掛金

10,000

〇〇セミナー料金

 

カルチャースクールが源泉徴収した金額や手数料がある場合

授業が完了した時点では、次のように仕訳をします。

借方

金額

貸方

金額

摘要

売掛金

10,000

売上

10,000

カルチャースクールでの授業

 

入金があった時点で、次のように仕訳をします。

借方

金額

貸方

金額

摘要

預金

5,979

売掛金

10,000

カルチャースクールからの入金

支払手数料

3,000

 

 

カルチャースクールへの手数料

事業主貸

1,021

 

 

源泉所得税

 

授業が行えず返金をする場合

授業前に月謝などを受け取っていたにも関わらず、授業が行えず返金する場合は次のように仕訳をします。

借方

金額

貸方

金額

摘要

前受金

2,000

現金

2,000

台風により授業不成立のため返金

 

授業料を払ってもらえない場合

売掛金が貸倒損失の要件に該当することとなった場合は、次のように仕訳をします。

借方

金額

貸方

金額

摘要

貸倒損失

10,000

売掛金

10,000

〇〇さん、授業料を貸倒処理

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は個人事業主が売上を計上するルールについて解説しました。

 

個人事業主が売上を計上するタイミングは「報酬や代金を受け取る権利が生じたとき」です。先生の事業の場合は「授業が完了したとき」がそのタイミングで、生徒やカルチャースクールから入金があったタイミングではないことに注意しましょう。

 

月謝制などで授業を行うより前にお金を受け取った場合、それは「前受金」と考えます。逆に授業が完了した日より後にお金を受け取る場合は「売掛金」が生じます。

 

天災などの事情で授業が行えない場合や、授業を行ったにも関わらず入金してもらえない場合の取り扱いも、知っておきましょう。

 

【監修者プロフィール】

税理士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、相続診断士、事業承継・M&Aエキスパート ・並木 一真(なみき かずま)

2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等、幅広く税理士業務に取り組んでいる。

https://namiki-kaikei.tkcnf.com/